「突然思い付いた言葉だ」
- 「ダーティーペア症候群」。大ヒット作品に、本来の流れを無視したメディアミックスが出現するが、それも大ヒットしてしまい、結果的に誰もが納得する作品作りが不可能になってタイトルが袋小路に迷い込んでしまう現象。
「袋小路とは?」
「ダーティーペアは本来、SFマガジンに掲載されたSF小説【ダーティーペアの大冒険】に端を発するもので、主人公の少女2人組みはスタジオぬえにいた2人の女性ということになっている。実際に、この2人がSF大会で壇上に出てくるはあったし、劇場版のクラッシャージョウ内で上映されているダーティーペアはこの2人が声を当てている。ビジュアルは安彦良和であり、劇場版のクラッシャージョウも安彦良和だから完全に安彦ダーティの世界が成立している」
「それで?」
「ここまでの流れは既に大ヒット状態だった」
「ならいいいじゃないか」
「でもね。実は、その後に始まった単体のアニメとしてのダーティーペアは全くの別物になった。ビジュアルも中身も別物」
「ファンの反発を喰らった?」
「そんな感じだった」
「それで話はおしまい?」
「いや、実はアニメのダーティーペアはそれはそれで大ヒットしてしまった」
「ファンの嗜好はどうなるわけ?」
「つまり、2つに引き裂かれてしまったわけだよ」
「表面的な見た目はあまり差がないね」
「でも、かなり異質なので、同じ感性では入り込めない」
「なるほど」
「結局、このねじれを解消するには全てを仕切り直したダーティーペアFLASHという企画を必要としたが、それでは全てを満たせなかったのだろう。ダーティーペアの神通力は徐々に低下して最終的には消えていった感じだ」
「こういうパターンを、ダーティーペア症候群と名づけたわけだね」
「そうだ」
「他に具体例は?」
「ヤマトだよ」
「は?」
「21世紀ヤマトもこの症候群に冒されている可能性がある」
「なぜ?」
「ヤマトはヤマト2199の第1話で突然出現したものではないし、2009年の復活篇で突然出現したものでもない。その前段階として、ギャラクティカというSFドラマのヒットや、パチンコのヤマトなどが存在し、それらの流れの上に21世紀ヤマトは成立している」
「それで?」
「この流れをずっと見た上で21世紀ヤマトを見た人と、いきなり見た人ではかなり感想が違う」
「どういうこと?」
「前者は【なんだこのシーンはギャラクティカそのまんまじゃないか】と白けるが、後者は【素晴らしい感動しました】我を忘れて興奮していたりする」
「それがダーティーペア症候群に結びつくわけだね?」
「そう。ヤマトファンのかなりの割合はそもそもSF映画SFドラマが好きで、そういうものをずっと見ていたはずだ。そういう視点から、【その当時のリアルタイムの他作品と比較してどうなのか】という評価が行われる人達が無視できない人数存在していると推定される」
「そうじゃない人もいるわけだね?」
「そう。古代ファンは、古代が出てこないSF映画SFドラマなんて見ない。それがいきなりヤマト2199を見て【見たことが無い凄い映像を見た】と感動する。当然だ。見てない映像は前提にできない」
「つまり、宇宙戦艦ヤマトという作品も、ダーティーペアと同じ末路を辿る可能性があるわけだね?」
ならばFLASHはどこか §
「それなら宇宙戦艦ヤマトFLASHもあるはずだよ」
「それはね。2520がそうだと思うよ」
「えー」
「あるいは、復活篇の上條や小林がそうだと思うよ」
「でも、広範囲の支持は得られていないね?」
「そうだな。古代ファンはナブや上條を好きになる理由が無い」
「上條の後に古代がいるしね。中年だけど」